K 「このあいださ、嫁さん連れて実家に結婚の報告に行ってきたよ。
嫁さん、新潟へ行くのは初めてだっていうからさ、
報告のついでに観光してきた。
日本海見て、マリンピア水族館行って、古町で買い物して、
万代橋渡ってイタリアン食べて、内の倉ダム行ってきたよ。」
私 『内の倉ダム?何にも無いじゃん、あんなところ。』
内の倉ダムは、新発田市街から車で20分ほど進んだ山中にあるダムで、
地元の人がバーベキューや釣りを楽しむには良いところだが、
観光地ではない。
K「・・・確かに。何にも無くて自然が奇麗だけれど、新潟に
初めて来る人に紹介する場所ではないな。
そういや、嫁さんのリアクションも微妙だったな。
なんであんなところに連れていったんだろうな?」
1ヶ月後。
K「なんであの時に内の倉ダムに行ったのか解った気がするよ。
養老孟司さんの本でさ、
『自分があと1ヶ月で死ぬ、と解ってから見る桜はどんなに奇麗だろう』
て文章を読んだら、これだと思った。
俺さ、小学校の時に1年くらい登校拒否してたじゃない。
ほとんど外に出ずに引きこもっていた俺を、両親が心配して休みの
たびに連れ出してくれていた場所が内の倉ダムだったんだよね。
毎日家に引きこもっていた当時の俺には、内の倉ダムの自然が
さぞかし奇麗に写っていたんだろうと思うよ。
いつのまにか、無意識のうちに自分にとってとても大切な場所に
なっていたみたい。中学、高校とイヤなことがあると一人でダムに
行ってることもあったしね。
だから、自分の大切な人に、この大切な場所を共有して
欲しかったんだろうね。
まぁ、嫁さんはそんなことに気づくわけないわな。万代で食べた
イタリアンには相当驚いていたけれど。(笑)」
イタリアンは新潟地元特有の「洋風ソースかけ焼きそば」。
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