2010.08.21
「なぜ日本人の体型は胴長短足だったのか」2の⑥
・『窮屈袋』
西洋の靴文化になかなか馴染めていなかった明治初期の日本では、靴のことを『窮屈袋』と呼んでいました。下駄や草履などの足が開放された履き物を履いていた日本人には、足全体を覆う閉塞的な靴は窮屈だったのでしょう。
靴生活が定着してきた現代でも、日本人は必ず家の中では靴を脱いでいます。一日の仕事が終わって家に帰り、靴を脱いだ時の足の開放感や気持ち良さは言葉に表せません。
現代でも、やはり日本人は靴を無意識のうちに『窮屈袋』と感じているのかもしれません。靴の踵を踏み潰して、スリッパのようにして履いたり、家に上がる時に靴を脱ぎやすいように靴紐をプレゼントのリボンのようにふんわりと結んだり、自分の足のサイズよりも大きめの靴を履いている人がとても多いです。
ここ数年、若い女性の間で流行している『ムートンブーツ』にこの特徴が顕著に見られます。(ムートンブーツは、サンタのおじさんが履いているようなモコモコでフカフカしてそうなブーツです。)ムートンブーツの形が、明治11年(1878)に日本に訪れたアメリカの動物学者エドワード・S・モースのスケッチにそっくりなのがとても面白いです。皆さんも、冬にこのようなブーツを履いている女性を一度は見た事があるのではないでしょうか。
モースは、自身の著書「日本その日その日」で次のように記しています。
「日本人は我々の服装を使用するのに、帽子はうまい具合にかぶり、また衣服も相当に着こなす。しかし、日本の靴屋さんは、見たところ靴らしくおもわれる物はつくるが、まだまだカカトを固くする技術を飲み込んでいない。靴を見ることはまれであるが、見る靴はたいていカカトのところが曲がっている。」
(『日本その日その日2』E・S・モース 石川欣一 訳 平凡社)
日本人の履く靴は、サイズが大きくてブカブカで踵がグニャグニャな事が多いのですが、これでは靴は足の機能を延長した道具として充分に機能しないんです。靴の踵が硬いのには理由があります。私は履きものの重要な機能は、『足裏の保護』、『足のアーチ形成の補助』、『踵の動揺性の制御』の3つにあると考えています。
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